富山市大泉夫婦殺人・放火事件|「犯人」を名乗る声明文と現場図、なぜ16年未解決なのか

2010年代

2010年4月20日、昼ごろ。富山市大泉にあった3階建てのSKビルディング。

その2階で暮らしていた夫婦が殺害され、居室に火を放たれた。

被害者は、福田三郎さん、当時79歳。妻の、信子さん、当時75歳。

2人はいずれも首を絞められて死亡していた。そして犯人は、殺害後に居室へ放火したとみられている。事件現場からは、被害者の財布が持ち去られた可能性もあった。

しかし、この事件をさらに不可解なものにしたのは、その後だった。「犯人」を名乗る人物が、出版社へCD-Rに記録した犯行声明文と、現場を示す図面を送りつけた。

さらに事件から約2年半後。富山県警の警部補だった男性が殺人・放火などの容疑で逮捕された。

しかし――その男性は後に嫌疑不十分で不起訴。検察審査会も不起訴相当と議決した。そして事件は再び、犯人が確定していない未解決事件として残された。

2026年現在も富山県警は捜査本部を維持し、最大1000万円の懸賞金を設定して情報を求めている。


事件概要

項目内容
発生2010年4月20日 正午ごろ
場所富山県富山市大泉1520番地1
現場SKビルディング2階(福田さんが所有するビル)
被害者福田三郎さん・信子さん夫妻
年齢三郎さん79歳(会社役員)、信子さん75歳
死因首を絞められたことによる窒息死
状況殺害後、灯油がまかれ居室が放火された
その他財布が持ち去られた可能性
特徴犯人を名乗る人物が週刊誌へ犯行声明文と図面を送付
2012年県警元警部補の男性を殺人・放火容疑で逮捕
2013年嫌疑不十分で不起訴、検察審査会も不起訴相当と議決
2026年現在未解決

富山県警が現在使用している名称は、「富山市大泉地内における夫婦殺人・放火事件」である。


4月20日昼、ビル2階から出火

事件が起きたのは2010年4月20日。現場は富山市大泉のSKビルディング2階だった。

富山県警は現在の公式ページで、「昼ころ」福田三郎さん・信子さん夫婦が殺害され、放火されたとしている。

後年の報道によると、三郎さんは会社役員。夫婦はこのビルの居室で生活していた。火災の後、2人が死亡しているのが発見された。

司法解剖などから、2人は火災で死亡したのではなく、出火前に首を絞められていたことが判明した。警察は殺人・放火事件として捜査を開始した。


2人はいずれも絞殺されていた

2025年の共同通信や日テレ系報道でも、三郎さんと信子さんは、自宅で首を絞められて殺害されたとされている。そして、その後に居室へ火がつけられた。

なぜ犯人は夫婦を殺害しただけでなく、さらに放火したのか。証拠を消そうとしたのか、事件を火災事故に見せようとしたのか、あるいは別の目的があったのか。犯人が確定していない現在、その理由は分かっていない。


現場から消えた可能性のある財布

富山県警は現在も、「現場から持ち去られた可能性のある財布」を専用ページで公開している。

警察が掲載しているのは同種品の写真で、2025年の県警ポスターでは、ルイ・ヴィトン製「ダミエ柄」の長財布とされている。

ただし、実際に犯人が財布を持ち去ったことまで確定しているわけではない。富山県警自身が、「持ち去られた可能性がある」として情報を求めている。

もし財布が犯人によって持ち出されたのであれば、金銭目的が事件に関係していた可能性も考えられる。しかし、それだけで強盗目的だったと断定することはできない。


出版社へ届いた「犯行声明文」

この事件の最大の特徴の一つが、犯人を名乗る人物から届いた犯行声明文である。

富山県警によると、犯人を名乗る人物が出版社に対して、CD-Rに記録された犯行声明文を、現場を示す図面とともに送りつけた。当時の報道によれば、送付先は週刊誌の編集部で、声明文には金銭を求めるとみられる内容も含まれていたと伝えられている。

富山県警は現在も、「犯行声明文」と、「犯人を名乗る者が出版社に送りつけた図面」をそれぞれ専用ページで公開している。

単なるいたずらだったのか、実際の犯人が送ったものだったのか、事件を知る別人が作成したものだったのか。この点は、後の捜査で大きな意味を持つことになる。


富山県警の警部補だった男性を逮捕

2012年12月。事件は大きく動いた。富山県警は、当時54歳だった県警警部補の男性を、殺人・現住建造物等放火などの容疑で逮捕した。現職の警察官が同僚だった事件の被疑者として逮捕されるという、異例の事態だった。

当時の報道では、この男性は福田さん夫妻と長年の付き合いがあり、2004年春まで夫妻の近所に住んでいた間柄だったと伝えられている。事件当時、参考人として事情聴取を受けたこともあったという。

逮捕容疑は、2010年4月20日正午ごろ、福田さん宅で夫妻の首を絞めて殺害し、その後、灯油をまいて放火したというもの。当時の報道によれば、取り調べに対してこの男性は「私がやったことに間違いありません。被害者と家族に本当に申し訳ない」という趣旨の供述をし、放火の理由については「証拠隠滅を図りたかった」と話したとも伝えられている。

これは全国的にも大きく報じられた。しかし、ここで重要なのは、逮捕されたことと、犯人であることが司法上確定することは別であるという点である。

なお、この男性は2013年、事件とは別の地方公務員法違反(捜査情報の漏えい)の罪で有罪となり、懲戒免職処分を受けている。これはあくまで捜査情報漏えいという別件についての処分であり、夫妻殺害・放火事件について有罪が確定したわけではない。


しかし「嫌疑不十分」で不起訴

2013年7月24日。富山地検は、殺人や放火などの容疑について、この元警部補を嫌疑不十分で不起訴処分とした。

J-CASTの当時報道では、逮捕後の供述と、押収された証拠や現場状況との間に食い違いがあったことなどが伝えられている。

つまり、事件への関与を示すように見える事情が存在する一方、刑事裁判で有罪を立証できるだけの証拠が揃わなかった。不起訴は有罪判決ではない。当然、この男性を事件の犯人と断定することはできない。


遺族は検察審査会へ申し立て

不起訴処分に対し、福田さん夫妻の遺族は納得しなかった。遺族は富山検察審査会へ審査を申し立てた。

しかし2014年7月、富山検察審査会は、元警部補を不起訴とした富山地検の判断について、不起訴相当と議決したと報じられている。不起訴相当とは、検察官による不起訴処分を妥当と判断する議決である。

こうして、一度は捜査が大きく動いたものの、殺人・放火事件について刑事裁判が開かれることはなかった。なお、警察庁はこの事件を2013年10月17日付で「捜査特別報奨金」の対象事件に指定しており、事件そのものは不起訴後も公的に未解決として扱われ続けている。


では、犯行声明文を書いたのは誰なのか

事件には、極めて不可解な問いが残る。出版社へ犯行声明文と現場図を送った人物は誰だったのか。

富山県警は2026年現在も、公式サイトで、

  • 犯行声明文
  • 出版社へ送られた図面
  • 持ち去られた可能性のある財布
  • 現場周辺の写真・動画

について情報提供を求めている。もしすべてが完全に解明済みであれば、現在もこれらを公開して情報を募る必要はない。事件は今なお、「誰が夫婦を殺害し、火をつけたのか」という根本部分が解決していない。


不可解な5つのポイント

1. なぜ夫婦2人を殺害する必要があったのか

被害者は高齢の夫婦だった。犯人は2人を絞殺し、さらに居室へ火を放った。

金銭が目的だったのか、夫婦に対する個人的な動機があったのか、それとも別の目的だったのか。動機は現在も確定していない。

2. なぜ放火したのか

殺害後に放火。この行動には明確な意図があったようにも見える。逮捕された元警部補は取り調べに対して「証拠隠滅を図りたかった」という趣旨を述べたと報じられているが、これはあくまで不起訴となった人物の供述であり、事件の公式な結論として確定しているわけではない。

火によって、犯人の痕跡がどの程度失われたのかも公表されていない。

3. 犯行声明文と現場図は誰が作ったのか

出版社へ送られたCD-R。そこに記録された犯行声明文。そして現場を示す図面。

それらを作成した人物が、実際の犯人なのか、事件の事情を知る人物なのか、あるいは別の人物なのか。現在も公式ページで情報提供対象となっている。

4. 一度逮捕者が出たのに、なぜ未解決なのか

この事件では、元県警警部補の男性が殺人・放火容疑で逮捕された。しかし、検察は嫌疑不十分として不起訴。検察審査会も不起訴相当と判断した。

したがって、法的に犯人が確定した人物はいない。「逮捕された人物がいる」という事実と、「事件が解決した」ということは同じではない。

5. 16年たっても何が足りないのか

事件から16年。2026年4月20日にも、富山県警は事件専用ページと懸賞金制度を更新している。

2025年時点では、県警に寄せられた情報は約160件。2026年報道では約170件に増えたとされるが、事件解決には至っていない。

つまり、数多くの情報はある。しかし、犯人を刑事責任まで結びつけられる決定的な証拠が見つかっていない。


未解決事件専門の「特命捜査係」

富山県警は2024年、長期未解決事件を扱う「特命捜査係」を設置した。2025年のKNB報道では、この事件についても、科学捜査など最新技術を活用しながら捜査を続けているとされている。

そして2026年4月。事件発生から16年を迎え、県警は再び現場周辺で情報提供を呼びかけた。報道では、警察官ら25人が参加し、これまでに約170件の情報が寄せられたとされている。


最大1000万円の懸賞金

2026年4月20日、富山県警は改めて捜査懸賞金制度を更新した。現在の上限は、

  • 富山県警察捜査懸賞金:500万円
  • 富山市大泉地内の殺人・放火事件捜査に協力する会:500万円

合わせて、最大1000万円。対象期間は、2026年4月20日から2027年4月19日まで。事件解決や被疑者の検挙につながる有力情報が対象となる。

情報提供先は以下の通りである。

  • 富山県警察本部 刑事部捜査第一課 富山市大泉地内における殺人・放火事件捜査本部:076-441-2211

声明文まで残した「犯人」はどこにいるのか

2010年4月20日。福田三郎さんと信子さんは、自宅で命を奪われた。そして住宅には火が放たれた。財布がなくなった可能性がある。

事件後には、犯人を名乗る者から、犯行声明文、現場図という異例の資料まで出版社へ送られた。

一度は、事件の容疑者として逮捕された人物もいた。しかし不起訴となり、司法上、犯人は確定しなかった。

そして16年後。富山県警はいまも、犯行声明文も、図面も、財布も公開したまま、事件を解決する情報を探している。

あの声明文を書いた人物は、本当に犯人だったのか。そして、福田夫妻を殺害し、火を放ったのは誰だったのか。2026年現在も、その答えは出ていない。


参考資料

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