1997年5月、宮崎県都城市安久町の山林で、高齢の女性が殺害され、遺棄される事件が起きました。犯人は見つからないまま、時間だけが過ぎていきます。
それから1年10か月後の1999年3月。遺体が捨てられていたその場所に、誰かが花輪と缶ビールを供えていきました。上に鳩の飾りが付いた古い花輪と、長野オリンピックの記念缶の「一番搾り」です。誰が、何のために置いたのか。宮崎県警は今も、この2つの品の写真を公開して、心当たりのある人を捜しています。
事件の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生 | 1997年(平成9年)5月 |
| 場所 | 宮崎県都城市安久町の山林 |
| 被害者 | 高齢の女性(氏名・年齢は公表されていない) |
| 事件の種類 | 殺人・死体遺棄 |
| その後 | 1999年3月、遺体が捨てられていた場所に花輪と缶ビールが供えられているのが見つかる |
| 担当 | 宮崎県都城警察署 |
| 現在 | 未解決(時効なし) |
鹿児島との県境に近い、都城の南の町
安久町(やすひさちょう)は、都城市の南の端にある町です。南は鹿児島県曽於市、東は日南市や串間市と接していて、安久川などの川が流れ、金御岳(かなおだけ)の山も抱えています。人口は約3,800人(2023年)。市街地から離れた、山と田畑の多い地域です。
事件の舞台は、この町の山林でした。宮崎県警が公表しているのは、1997年5月に「老女殺人・死体遺棄事件」が起きたということまでで、亡くなった女性の名前や年齢、殺害の方法、遺体が見つかったいきさつなどは明らかにされていません。分かっているのは、高齢の女性が命を奪われ、山の中に捨てられていたということです。
2年後に現れた、鳩の花輪と五輪のビール
この事件が今も語られるきっかけになったのは、それから1年10か月後の1999年3月のことです。遺体が捨てられていた場所に、花輪と缶ビールが供えられているのが見つかりました。
花輪は直径40〜45センチほどの大きさで、上の部分に鳩の飾りが付いていました。県警によると、かなり古いもので、どこかの家で長く保管されていたものと思われます。花輪は本来、足を付けて立てて飾るものですが、このときは足がなく、輪の部分だけが置かれていたと考えられています。
一緒に置かれていたのは、キリンビールの「一番搾り」です。それも、1998年2月に開かれた長野オリンピックを記念して売り出された缶でした。県警は、花輪の全体と拡大写真、鳩の飾りのアップ、缶ビール、そしてそれらが置かれていた場所の写真まで、合わせて5枚を公開しています。
古い花輪と、比べればまだ新しい記念缶。この2つを持って山林の奥まで入り、遺体のあった場所にそっと置いていった人がいた。その人物は、今も分かっていないのです。
捜査と謎・数々の説
警察の動向
事件を担当しているのは都城警察署です。宮崎県警の「捜査にご協力を」のページに載っている事件は3件だけで、この事件はそのうちの一つです。
目を引くのは、県警が呼びかけている中身です。犯人の特徴や事件当日の目撃ではなく、「花輪や缶ビールに心当たりのある人」からの情報を求めています。それだけ、この供え物を置いた人物が重要だと見ているのでしょう。ページは2025年7月にも更新されていて、情報を寄せた人の秘密は固く守るとしています。
残された謎
最大の謎は、供えた人がなぜ遺体の場所を知っていたのかです。山林の中の一地点を、正確にたどれる人は限られます。わざわざ古い花輪を選んだ理由、足を外して輪だけを置いた理由、そして長野五輪の記念ビールを添えた理由も分かっていません。女性が誰だったのかが公表されていないため、女性と供え物の間にどんなつながりがあったのかも、外からは見えないのです。
説1:犯人自身が供えた
遺体を捨てた本人なら、場所を知っていて当然です。時間がたつうちに罪の意識が強くなり、せめて弔おうとしたのではないか、という見方です。県警が供えた人物を捜し続けている理由も、ここにあると考えられます。ただ、供えた人物が犯人だと確かめられたわけではありません。
説2:女性を悼む人が供えた
女性を知っていた人が、どこかで遺体の場所を知り、手を合わせに来たという見方です。家にしまってあった花輪を持ち出し、女性が好きだった、あるいは自分が選んだビールを添えたのかもしれません。この場合、供えた人は事件とは関係がなく、ただ女性を悼んでいただけということになります。
説3:何かを知っている第三者が供えた
犯人ではないものの、事件について何かを知っている人物が供えたという見方です。誰かから話を聞いて場所を知り、名乗り出ることはできないまま、供え物だけを置いていった。そう考えると、名前を出さずに弔ったことの説明もつきます。
未詳録の考察
この事件でいちばん引っかかるのは、花輪とビールの「時間のずれ」です。花輪は家で長く眠っていた古いもの。一方のビールは、1998年の長野五輪の記念缶で、供えられた1999年3月から見れば、1年あまり前に売られていたものです。供えた人は、手元にあったものをかき集めて持っていったのではないでしょうか。前もって用意したというより、ある日、思い立って山へ向かった。そんな姿が浮かびます。
そして3月は、春のお彼岸の季節でもあります。お墓に手を合わせる時期に、墓のない場所へ花を供えに行った。もしそうなら、その人にとって山林のあの場所は、女性の眠る場所だったのかもしれません。花輪の足を外していたのも、目立たないように運ぶためだったのではないかと考えます。
私は、供えた人は女性に対して強い感情を抱いていた人物だと思います。それが罪の意識だったのか、悲しみだったのかは分かりません。ただ、鳩の付いた古い花輪が、誰かの家にあったことは間違いないのです。その家を知っている人が、まだどこかにいるのではないでしょうか。
事件がもたらした影響・結末
時効の撤廃で、今も罪に問える事件に
事件が起きた1997年当時、殺人罪の時効は15年でした。そのままなら、2012年には時効を迎えていたことになります。ところが2010年4月27日、殺人など、人を死なせ、死刑にあたる罪の時効を廃止する法律が施行されました。この改正は施行の時点でまだ時効を迎えていない事件にも当てはまるため、この事件の殺人には、もう時効がありません。
「物」から人をたどる捜査
この事件で県警が公開しているのは、人の顔ではなく「物」の写真です。花輪や缶ビールは、それだけでは誰のものか分かりません。けれど、「祖母の家にこんな花輪があった」「この記念缶を箱で買っていた人がいた」といった記憶と結びついたとき、初めて人にたどり着けます。物の写真を何十年も公開し続けるのは、そうした一言を待っているからなのです。
29年たっても続く呼びかけ
事件から29年、花輪が見つかってからも27年がたちました。それでも宮崎県警は、写真を公開したまま情報を待っています。供えた人自身が名乗り出ることも、遅すぎるということはありません。
情報提供先
宮崎県都城警察署
電話:0986-24-0110
鳩の付いた花輪や、長野オリンピック記念の「一番搾り」に心当たりのある方は、どんなことでも構いません。県警は、情報を寄せた人の秘密は固く守るとしています。
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人目につかない場所に女性の遺体が捨てられ、今も解決していない事件。
参考資料
- 宮崎県警察「都城市安久町における老女殺人・死体遺棄事件」
発生時期と場所、1999年3月に供えられていた花輪(大きさ、鳩の飾り、古さ、足がないこと)と缶ビール(長野オリンピック記念の一番搾り)、公開写真5枚、都城警察署の連絡先を確認(2025年7月17日更新)。 - 宮崎県警察「捜査にご協力を」
県警が情報を求めている事件の一覧を確認。 - Wikipedia「安久町」
安久町の位置、隣接する市町、河川、人口(都城市の統計による)を確認。 - 法務省「法務省だより あかれんが Vol.31」
2010年4月27日施行の公訴時効の見直しと、施行時点で時効を迎えていない事件への適用について確認。


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