1991年7月24日、夏休みに入って4日目の夜。福島県田村郡船引町(現在の田村市船引町)の石井さんの家では、小学2年生の舞ちゃん(当時7歳)が、泊まりに来ていた友だち2人と一緒に、一つのベッドで川の字になって眠りました。
翌朝5時過ぎ、目を覚ました友だちが、舞ちゃんがいないことに気づきます。両側に友だちが寝ていたのに、真ん中の舞ちゃんだけが消えていたのです。靴も、着替えの服も、家に残ったままでした。
それから35年。舞ちゃんの行方は、今も分かっていません。福島県警は今も「女子小学生行方不明事案」として、舞ちゃん本人を見た人、そして当時、不審な人や車を見た人からの情報を求め続けています。
事件の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 行方不明 | 1991年7月24日夜から25日朝にかけて |
| 場所 | 福島県田村郡船引町(現・田村市船引町)の自宅 |
| 本人 | 石井舞さん(当時7歳、小学2年生) |
| 当時の特徴 | 身長120センチくらい、体重21キロくらい、中肉、ショートカット、額が広く、鼻の右脇に粟粒ほどのほくろ、笑うとえくぼができる |
| 当時の服装 | 横縞の婦人用Tシャツ、白色のパンツ |
| 現在 | 見つかっていない |
| 担当 | 福島県田村警察署 小学生行方不明対策本部 |
その夜の石井家
舞ちゃんの家は、父親の石井賢一さんが営む建設会社の事務所を兼ねた2階建てでした。事件を取材した書籍などによれば、家には舞ちゃんの両親ときょうだい、祖父母のほか、父親の会社で住み込みで働く若い従業員の男性も暮らしていました。大勢の人が出入りする、にぎやかな家だったのです。
その日、舞ちゃんは昼間から友だちとプールで遊び、夜は泊まりに来た友だち2人と、2階の両親の寝室の隣にある洋間で眠ることになりました。いつもは両親と一緒に寝ていた舞ちゃんにとって、友だちと過ごす特別な夜だったといいます。
記録によれば、その夜の家の動きは次のようなものでした。
| 時刻 | できごと |
|---|---|
| 午後9時20分ごろ | 祖父母がタクシーで出かける。このとき1階の玄関に鍵を掛ける |
| 午後9時30分ごろ | 舞ちゃんと友だち2人が、2階の洋間のベッドで川の字になって寝る |
| 午後10時半ごろ | 住み込みの従業員の男性が外出。1階の玄関は鍵が掛けられないままになる |
| 午後10時半ごろ | 母親が子どもたちの部屋をのぞき、タオルケットを掛け直す。これが舞ちゃんの最後の確認とされる |
| 翌25日 午前4時半ごろ | 起きて仕事の準備を始めた父親が、夜は鍵が掛かっているはずの2階の玄関が開いていることに気づく |
| 午前5時20分ごろ | 目を覚ました友だちが、舞ちゃんがいないことに気づく |
| 午前6時ごろ | 家族が警察に届け出る |
ここで分かるのは、午後10時半ごろに母親が様子を見てから、翌朝5時20分ごろまでの約7時間の間に、舞ちゃんがいなくなったということです。
開いていた2階の玄関
警察の捜査で分かったことも、記録に残されています。家の中からは、外から誰かが無理に入った跡は見つかりませんでした。警察犬は家の前の道路で動かなくなり、舞ちゃんは車で連れ去られた可能性が高いとみられました。
さらに、舞ちゃんの靴や服はなくなっておらず、ベッドの寝具にも乱れがなかったといいます。舞ちゃんは、大人用のTシャツと下着という寝間着姿のまま、眠っているところを誰かに抱き上げられ、運び出されたのではないか。そう考えられているのです。
警察は事件から2日後の7月27日、公開捜査に切り替えました。身代金を求める連絡は、一度もありませんでした。
その夜、家を空けていた男性
事件の後、家族の疑いの目が向けられたのは、その夜に外出していた住み込みの従業員の男性でした。この男性が夜に出かけたのは、半年前に働き始めてから初めてのことだったといいます。
男性は、郡山市の友人に会うため夜10時半ごろに家を出て、船引駅に着くと最終電車が出た後だったのでタクシーで郡山へ向かった、しかし友人は現れず、駅前で夜を明かして始発で帰ってきた、と説明しました。男性は警察で長く事情を聴かれましたが、郡山まで乗せたというタクシーの運転手や、駅前で男性を見たという人が見つかり、その夜、郡山にいたことが確認されたとされています。警察がこの男性を逮捕したり、事件に関わったと発表したりしたことは、一度もありません。
父親が会社をたたむまで
父親の賢一さんは、テレビの公開捜査番組にも出て、情報提供を呼びかけ続けました。事件から半年以上がたったころには、10人ほどいた従業員の再就職先を決めて会社をたたみ、舞ちゃんを捜すことに専念したといいます。それでも家にかかってくるのは、無言電話やいたずら電話ばかりだったと伝えられています。
近藤昭二さんの取材に、お母さんはこう話していたそうです。舞ちゃんがいなくなったとき、みんな夢中で家の中を捜し回り、その中で犯人が残した証拠を消してしまったのかもしれない、と。
捜査と謎・数々の説
警察の動向
福島県警は今も、田村警察署の小学生行方不明対策本部で情報を受け付けています。求めているのは、舞ちゃんを見たという情報だけではありません。現場付近で不審な人を見たり、その話を聞いたりした人、不審な駐車車両や気になる車を見た人からの情報も求めています。メールや匿名での情報提供もでき、内容によっては謝礼が支払われることもあるとしています。
なお、ネット上には、この事件は2006年に時効を迎えたとする記述が多くあります。けれど、福島県警は35年たった今も、舞ちゃんの写真を掲げて情報を求め続けているのです。
残された謎
最大の謎は、両側に友だちが眠っていたのに、なぜ真ん中の舞ちゃんだけが、誰にも気づかれずにいなくなったのかです。そして、夜は鍵が掛かっているはずの2階の玄関が、なぜ朝には開いていたのか。
説1:外から入り込んだ人物に連れ去られた
1階の玄関の鍵が開いていた時間があり、2階の玄関も朝には開いていました。外から誰かが家に入り込み、舞ちゃんを抱えて2階の玄関から出て、車で連れ去ったという見方です。警察犬が家の前の道で止まったことや、警察が今も不審な車の情報を求めていることは、この見方と重なります。
説2:その夜の家の様子を知っていた人物
大勢が暮らす家の中で、どの部屋に誰が寝ているのかを知り、誰も起こさずに舞ちゃんだけを連れ出す。それは、家の造りやその夜の様子をある程度知っていた人でなければ難しいのではないか、という見方もあります。ただし、家に出入りしていた人は多く、それが誰だったのかを示す証拠は何もありません。
未詳録の考察
この事件の記録を読んでいて、私がいちばん胸に引っかかったのは、舞ちゃんの靴が家に残っていたということです。
7歳の子どもが、夜中に自分で起きて外へ出ていったのなら、靴をはいていくはずです。靴も服も残し、寝具も乱れていない。舞ちゃんは目を覚ますこともなく、眠ったまま誰かに抱き上げられたのではないでしょうか。両側の友だちが気づかなかったことも、それで説明がつきます。
だとすれば、その人物は、舞ちゃんがその夜だけはいつもと違う部屋で寝ていることを知っていたか、あるいは家の中を探し回ることなく、まっすぐあの部屋にたどり着いたことになります。私は、犯人はその夜の石井家の様子をどこかで知ることができた人物だったと考えます。家の外から長く見張っていた人なのか、何かのきっかけで家の事情を耳にした人なのか。そこから先は、誰にも分からないのです。
この事件については、ネット上で特定の人を犯人だと決めつける話がたくさん語られてきました。でも、そうした話が、すでにアリバイが確かめられた人や、深い悲しみの中にいる家族をさらに傷つけてきたことも忘れてはいけないと思います。
舞ちゃんは、生きていれば今42歳です。お母さんは、夢中で家の中を捜したことを悔やんでいました。けれど、あの朝、娘を捜して家じゅうを走り回ったことを、誰が責められるでしょうか。35年前の夏の夜、船引町のあたりで不審な人や車を見かけた人が、今もどこかにいるかもしれないと考えます。
事件がもたらした影響・結末
家の中でも子どもは守られているとは限らない
この事件は、子どもにとっていちばん安全なはずの自宅で、しかも大勢の大人がいる中で起きました。夜の戸締まりや、家に人が出入りするときの鍵の扱いといった、ふだんは気にも留めない小さなことが、子どもの安全を左右することを、この事件は教えています。
家族が背負い続けるもの
父親は会社をたたみ、家族は舞ちゃんを捜し続けました。子どもが行方不明になった家族は、何十年たっても、答えのないまま毎日を過ごすことになります。そうした家族を、根拠のない噂で傷つけないこと。それも、私たちにできることの一つなのだと思います。
舞ちゃんは今も見つかっていない
2026年10月現在、舞ちゃんの行方は分かっていません。
情報提供先
福島県田村警察署 小学生行方不明対策本部
電話:0247-62-2121
福島県警察 メールでの情報提供
joho@police.pref.fukushima.jp
匿名での情報提供もできます。
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同じ福島県で起き、今も行方が分かっていない事件。
参考資料
- 福島県警察「女子小学生行方不明事案」
行方不明の日時と場所、当時の特徴と服装、求めている情報(本人・不審者・不審車両)、田村警察署の連絡先、匿名での情報提供と謝礼について確認。 - 近藤昭二『消えた子供たちを捜して!〈公開捜査〉続発した行方不明事件の謎』(二見書房、2000年)
当夜の家の様子、警察の捜査で分かったこと、お母さんへのインタビュー。 - 河合香織「ドキュメント児童失踪」(『新潮45』2003年11月号、新潮社)
- clairvoyant report「石井舞ちゃん行方不明事件」
上の2つの資料と1991年7月27日の福島民報を引いて、2階の玄関が開いていたこと、警察犬の反応、靴や服が残っていたこと、7月27日の公開捜査への切り替え、お母さんの言葉などを整理した記事。


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