2007年5月11日、夜明け前。愛知県豊川市平尾町にあるゴルフ場「平尾カントリークラブ」の近くで、一台の車が炎を上げていた。
午前5時24分ごろ、「平尾カントリーの近くで車が燃えている」との通報が警察に入った。
燃えていたのは、平尾カントリークラブが所有する車だった。警察官がクラブハウスへ確認に向かう。そこで見つかったのは、荒らされた事務所。そして宿直室では、夜間警備をしていた佐々木健さん(当時60歳)が殺害されていた。
さらに、燃えた車が発見された空き地の周辺では、事件当日の午前5時すぎ、白っぽいセダンと、窓にスモークを張った黒っぽいバンが目撃されていた。
事件から19年以上が経過した2026年9月現在も、愛知県警はこの事件の専用ページを公開し、情報提供を求めている。
2007年5月10日の夜から翌朝
愛知県警が現在公表している事件の発生時間帯は、2007年5月10日午後9時30分ごろから、翌11日午前5時10分ごろまで。
現場は、愛知県豊川市平尾町木崩61番地27、平尾カントリークラブ・クラブハウス内だった。
夜間のゴルフ場。営業を終えたクラブハウスには、夜間警備の佐々木さんがいた。その後、何者かが建物内へ侵入したとみられ、事務所は荒らされた。そして佐々木さんは宿直室で殺害された。
最初に見つかったのは「燃えている車」
事件の発覚は、クラブハウスではなかった。きっかけとなったのは、ゴルフ場の近くで発生した車両火災だった。
5月11日午前5時24分ごろ、「平尾カントリーの近くで車が燃えている」との通報が警察に寄せられた。警察官が現場へ向かうと、燃えていた車は平尾カントリークラブの所有車だった。
なぜゴルフ場の車が、クラブハウスから離れた場所で燃えているのか。警察が確認のためクラブハウスへ向かったことで、殺人事件が発覚した。
荒らされていたクラブハウス
クラブハウスへ到着した警察官らが確認したところ、事務所内は荒らされていた。そして宿直室では、夜間警備を担当していた佐々木さんが死亡していた。
東日新聞の事件翌日の報道によれば、佐々木さんは頭部や顔面を鈍器のようなもので殴られていたとされる。
週刊ゴルフダイジェストの当時の記事によると、クラブハウス内にある据え付け金庫には、こじ開けようとした傷が残っており、強盗目的の犯行だったとみられている。一方で、事務所内には物色した跡がほとんどなかったことなどから、ゴルフ場の内部事情に詳しい人物による犯行ではないかとも指摘されている。ただし同記事も、内部事情に詳しい者であれば、ゴルフ場の金庫にそれほど多額の現金が保管されていないことも知っていたはずだとして、この見方にも疑問を投げ掛けている。
愛知県警は、この事件を現在、「豊川市平尾町地内における男性被害強盗殺人事件」として扱っている。ただし、県警の現在公開されている事件概要には、具体的に何が奪われたのか、犯人が最初から金品を目的としていたのかといった詳細は掲載されていない。そのため、本稿では犯行目的をそれ以上推測しない。
宿直室で何が起きたのか
現在公開されている警察資料から分かる範囲は限られている。
犯人が何人だったのか、どのようにクラブハウスへ侵入したのか、警備員と犯人が遭遇した経緯、犯行に使用された鈍器が何だったのか。こうした点について、愛知県警の現在の事件ページには詳しい説明がない。
事件発生時間帯も、午後9時30分ごろから翌朝5時10分ごろと約7時間40分の幅がある。静かな夜間のゴルフ場で、その時間のどこかに犯行が行われたとみられる。
持ち出されたゴルフ場の車
クラブハウスで警備員が殺害された後、ゴルフ場所有の車は現場から持ち出されていた。その車は後に、別の場所で燃えているのが発見された。
当時の東日新聞報道では、燃えた車が発見された場所について、クラブハウスから離れた空き地だったと報じられている。
なぜ車に火が放たれたのか。犯人が逃走に使用した痕跡を消そうとしたのか、別の目的があったのか。現在の公式資料からは確認できない。確実に言えるのは、クラブ所有車がクラブハウスとは別の場所で燃やされていたということまでである。
火災現場付近で目撃された2台
そして、この事件には現在まで愛知県警が公開し続けている重要な目撃情報がある。
車両火災が起きた空き地で、事件当日の午前5時すぎごろ、不審な車が2台目撃されていた。
1台は、「白っぽいセダンタイプ」。もう1台は、「黒っぽいバンタイプ」だった。黒いバンについては、窓にスモークが張られていたという特徴も公表されている。
事件発生時間帯の終了時刻とされる午前5時10分ごろ。そのすぐ近い時間帯に、燃えた社用車の周辺で目撃された2台。19年以上経った現在も、愛知県警はこの特徴を事件ページから削除していない。
2台の車は犯人のものなのか
ただし、ここも断定してはいけない。愛知県警が公開している表現は、あくまで、「不審な車2台が目撃されています」というものだ。
白いセダンや黒いバンの所有者が犯人だったと確定しているわけではない。犯人を乗せていたのか、犯行とは無関係の車だったのか、2台が互いに関係していたのか、そもそも車内に何人乗っていたのか。現在公開されている情報からは分からない。
本稿では、これら2台を事件当時に警察が情報を求めている不審車両として扱う。
なぜ2台だったのか
事件を読むと、どうしても気になるのが「2台」という点だ。白いセダン。黒いバン。
もし両方が犯行と関係していたのであれば、複数人による犯行だった可能性も考えたくなる。しかし、それも現在確認できる事実からは導けない。2台が同じグループだったという公式発表は確認できない。一方が燃やした車から人物を回収するために来た、という説明も公表されていない。
事件と車両との具体的な関係は、現在も明らかになっていない。だからこそ警察は、車種ではなく、「白っぽいセダン」「黒っぽい、スモークを張ったバン」という当時の記憶そのものを求め続けている。
犯人はゴルフ場を知っていたのか
夜間のゴルフ場。クラブハウス。宿直室。事務所。社用車。
犯人がこうした場所や設備について、事前にどの程度知っていたのかも分かっていない。警備員がいることを知っていたのか、金品の保管場所を知っていたのか、会社所有の車が利用できることを把握していたのか、偶然侵入して警備員と遭遇したのか。
現在公開されている愛知県警資料には説明がない。「内部事情を知る人物だった」といった推測を裏付ける公表資料も確認できない。
犯人の姿は公開されていない
この事件には、似顔絵や防犯カメラ画像のような具体的な人物像が公開されていない。
愛知県警の現在のページにも、年齢、性別、身長、服装、人数といった犯人の特徴は掲載されていない。
残されている大きな手掛かりは、荒らされたクラブハウス、殺害された夜間警備員、燃やされたゴルフ場所有車、そして、火災現場付近で目撃された2台の車。事件の周辺状況は残っている。しかし、その中心にいた人物の姿は見えてこない。
延べ約6万人を投入、2015年以降は情報途絶
事件から15年となった2022年5月の東海テレビの報道では、警察がこれまでに延べおよそ6万人の捜査員を投入してきたことが伝えられている。
同じ報道では、2015年以降、この事件についての新たな情報提供がなくなっていることも明らかにされている。
15年を迎えるにあたり、豊川署は名鉄の駅などに捜査員を立たせ、通勤客らへ情報提供を呼び掛けるチラシを配布した。豊川署の刑事課長は取材に対し、「科学捜査も進歩しております。どんな些細な情報でも結構ですので、幅広く情報提供をよろしくお願いします」と述べている。
2024年、事件から17年後も情報募集
事件は長期間未解決のままだが、警察の情報募集は終わっていない。
2024年5月、事件発生から17年を迎えた際にも、東日新聞は豊川署が改めて情報提供を求めていることを報じた。豊川署は、「ささいな情報でも連絡していただきたい」として事件解決への協力を呼び掛けていた。
そして2026年9月現在も、愛知県警の「個別の事件に対する情報提供」一覧には、本件が掲載されている。古い事件ページが単に残されているだけではない。現在も県警が情報提供を受け付けている未解決事件である。
19年以上残った「白」と「黒」
2007年5月11日の午前5時すぎ。夜が明け始める時間帯。ゴルフ場近くの空き地には、一台の車が燃えていた。
そして、その付近で、白っぽいセダンと、スモークを張った黒っぽいバンが目撃された。そのころ、平尾カントリークラブでは夜間警備員がすでに殺害されていた。
この2台を運転していた人物は誰だったのか。なぜ燃えているゴルフ場の車の近くにいたのか。事件とは無関係だったのか。19年以上が経った現在も、その答えは公表されていない。
犯人はなぜ車を燃やしたのか
クラブハウスを荒らした人物。夜間警備員を殺害した人物。ゴルフ場所有の車を持ち出した人物。そして、その車を燃やした人物。
これらがすべて同一人物、あるいは同一グループによるものなのか。愛知県警は一連の出来事を強盗殺人事件として捜査しているが、公開資料から犯行の全容を再現することはできない。
特に、車を燃やす行為には大きな疑問が残る。逃走に使った車を処分したのか、証拠を消そうとしたのか、別の意図があったのか。理由は公表されていない。残されているのは、焼けた車と、その周辺で目撃された2台の不審車だけである。
愛知県警は現在も情報を求めている
愛知県警は現在も、この事件について、「どんなささいなことでもいいですので、お寄せください」として情報提供を求めている。
情報提供先は、以下の通りである。
- 愛知県豊川警察署 特別捜査本部・刑事課:0533-89-0110
県警公式サイトから、事件専用の情報提供フォームを利用することもできる。
2007年5月10日の夜から翌朝。平尾町周辺で不審な人物や車を見た。白っぽいセダンに心当たりがある。スモークを張った黒いバンを覚えている。事件前後に誰かから不自然な話を聞いた。
当時は重要だと思わなかった記憶が、現在の捜査資料と結び付く可能性もある。
夜間のゴルフ場で警備員を襲い、社用車を持ち出し、火を放った人物は誰だったのか。その答えは、19年以上経った今も明らかになっていない。
参考資料
愛知県警察「2007年05月発生 豊川市平尾町地内における男性被害強盗殺人事件」
事件発生時間帯・場所、クラブハウスの状況、車両火災、白っぽいセダンと黒っぽいバンの目撃情報、情報提供先を確認。
愛知県警察・事件詳細ページ
愛知県警察「メール等を利用した個別の事件に対する情報提供」
2026年現在も本件が個別の情報提供対象事件として掲載されていることを確認。
愛知県警察・情報提供事件一覧
東日新聞「男性警備員殺害される」
事件翌日の報道。宿直室で男性警備員が発見され、頭部・顔面を鈍器のようなもので殴られていたことなどを確認。
東日新聞・2007年5月12日報道
東日新聞「豊川の強殺事件 発生から17年」
2024年5月時点でも豊川署が事件に関する情報提供を求めていたことを確認。
東日新聞・2024年5月12日報道


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