庄原市東城町粟田女性殺人事件|施錠された玄関と開いていた勝手口、一人暮らしの84歳を襲ったのは誰か

2020年代

2025年6月24日の午後、広島県庄原市東城町粟田の一軒家を、親族に頼まれた知人が訪ねました。この家で一人暮らしをしていた矢吹定代さん(当時84歳)と、その日の朝から連絡が取れなくなっていたからです。玄関の近くで、矢吹さんはうつぶせに倒れ、頭から血を流して亡くなっていました。

玄関には鍵がかかっていたのに、勝手口の鍵は開いていた。家の中は荒らされていなかった。矢吹さんは頭や顔を硬いもので何度も殴られていた。山あいの静かな町で起きたこの事件は、発覚から1年以上がたった今も、犯人が分かっていないのです。

事件の概要

項目内容
事件名庄原市東城町粟田女性殺人事件(広島県警の呼び名は「東城町における女性被害殺人事件」)
発覚2025年6月24日午後
場所広島県庄原市東城町粟田の被害者宅
被害者矢吹定代さん(当時84歳、一人暮らし)
発見時の状況玄関付近でうつぶせに倒れ、頭から出血していた
死因失血死(頭と顔を硬いもので複数回殴られ、頭の骨が折れていた)
家の状態玄関は施錠、勝手口の鍵は開いていた。室内に荒らされた形跡はなし
捜査庄原警察署の捜査本部(約50人態勢、延べ約9000人を投入、2025年12月時点)
現在犯人は分かっていない

連絡が取れなくなった朝

東城町は、広島県の北東の端、岡山県との境に近い山あいの町です。粟田の集落にある一軒家で、矢吹さんは一人で暮らしていました。

広島テレビの報道によると、6月24日の朝から、親族は矢吹さんと連絡が取れなくなっていました。心配した親族に頼まれて、その日の午後、知人が矢吹さんの家を訪れます。玄関の近くでうつぶせに倒れている矢吹さんを見つけたとき、声をかけても返事はなく、出血がひどかったといいます。親族の女性は「信じられないです。いまだに」と話し、もっと早く連絡をしておけばよかったと悔やんでいます。

施錠された玄関と、開いていた勝手口

事件の2日後、捜査関係者への取材から、家の様子が少しずつ伝えられました。玄関には鍵がかかっていた一方で、勝手口の鍵は開いていたのです。家の中に荒らされた形跡はありませんでした。警察は、矢吹さんがトラブルを抱えていたといった事情は把握していないとしています。

勝手口の鍵が開いていたからといって、犯人がそこから出入りしたとは限りません。矢吹さんがふだんから勝手口の鍵を開けていたのか、事件のときにだけ開いていたのかも、分かっていないのです。それでも、閉ざされた玄関の近くで矢吹さんが倒れていたという状況は、犯人がどう出入りしたのかという大きな問いを投げかけています。

何度も殴られていた84歳

6月26日に行われた司法解剖で、矢吹さんの死因は失血死と分かりました。頭と顔を硬いもので何度も殴られたとみられ、頭の骨が折れていました。84歳の女性に対して、繰り返し強い力が加えられていたことになります。

どんな物で殴られたのか、玄関の近くで最初に襲われたのか、別の場所から逃れようとしたのか。そうした詳しい状況は公表されていません。ただ、何度も殴られていたという事実からは、強い殺意があったことがうかがえるのではないでしょうか。

防犯カメラの少ない山あいで

広島県警は庄原警察署に捜査本部を置きました。2025年7月にまとめられた県警の資料では、県内の8件の未解決捜査本部事件の一つとして、この事件が挙げられています。ほかの事件がいずれも発生から15年以上たっているなかで、最も新しい事件です。

発覚から半年となった2025年12月には、警察官が現場の周辺でチラシを配り、不審な人や車についての情報を求めました。この時点で捜査本部は約50人の態勢を取り、投入された捜査員は延べ約9000人にのぼっていました。それでも捜査が長引いているのは、現場の周りに防犯カメラが少なく、目撃者を見つけるのも難しいためだと伝えられています。

捜査と謎・数々の説

警察の動向

庄原警察署の捜査本部は、事件の前後に現場の近くで見かけた不審な人や車について、今も情報を求めています。防犯カメラの映像が限られるなかで、地域の人の記憶が何より大切な手がかりになっています。

残された謎

いちばんの謎は、犯人がどのように家に出入りしたのかです。玄関は閉まり、勝手口は開いていた。その状況が犯人の動きとどう結びつくのかは、まだ分かっていません。家が荒らされていなかったことから、犯人の目的も見えてきません。矢吹さんが襲われたのが、親族と連絡が取れなくなった24日の朝より前だったのかどうかも、公にはされていないのです。

説1:家に招き入れた相手による犯行

矢吹さんが玄関の近くで見つかり、家の中が荒らされていなかったことから、矢吹さんが応対した相手、あるいは家に入れた相手による犯行ではないかという見方があります。ただ、矢吹さんの知り合いが疑われているという事実はなく、警察もトラブルは把握していないとしています。現場が自宅だったというだけで、周りの人を疑うことはできません。

説2:勝手口から入り込んだ人物

一方で、鍵の開いていた勝手口から何者かが入り込み、矢吹さんと鉢合わせしたのではないかという見方もあります。田舎では、昼間に鍵をかけずに過ごす家も珍しくありません。けれど、何かを探した跡がないことは、この見方とは合わないようにも見えます。どちらの見方にも、決め手となる証拠は示されていないのです。

未詳録の考察

84年の人生を、住み慣れた山あいの家で静かに重ねてきた矢吹さん。その最期が、自宅の玄関で何度も殴られるというものだったことに、言葉を失います。人と人との距離が近く、互いの顔を知る小さな集落で起きた事件だからこそ、住民の不安は計り知れなかったはずです。

防犯カメラが少ないことは、捜査の大きな壁になっています。けれど、裏を返せば、見慣れない車や人の姿が目立ちやすい土地でもあるはずです。あの日、粟田の道を走っていた車、集落で見かけた見知らぬ人。そうした小さな記憶が、事件を動かす鍵になるのではないかと考えます。

事件は、まだ記憶が新しいうちに解決されるべきものです。時間がたてばたつほど、記憶は薄れていきます。この事件が「長期未解決事件」の一つになってしまう前に、真相が明らかになることを願わずにはいられないのです。

事件がもたらした影響・結末

一人暮らしの高齢者が多い地域で

過疎と高齢化が進む中山間地域では、一人で暮らすお年寄りも少なくありません。この事件は、そうした地域に暮らす人たちに、戸締まりや見守りの大切さを改めて突きつけました。親族と連絡が取れなくなったことから異変に気づいたように、日ごろから連絡を取り合う関係が、もしものときの早い発見につながります。

防犯カメラという課題

都市部では、防犯カメラの映像が事件の解決を後押しする例が増えています。一方で、山あいの集落にはカメラがほとんどないことも多く、この事件でもそれが捜査の壁になりました。地域の安全をどう守り、もしもの事件のときに手がかりをどう残すのか。この事件は、中山間地域の防犯のあり方にも問いを投げかけているのではないでしょうか。

情報提供先

2025年6月下旬ごろ、庄原市東城町粟田のあたりで不審な人や車を見かけた方、事件について何か知っている方は、どんなに小さなことでも連絡してください。

窓口電話
広島県警察 庄原警察署 捜査本部0824-72-0110

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参考資料

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