函館市西旭岡町女性殺人事件|玄関は施錠、裏口は半開き――昼間の住宅で68歳女性を襲ったのは誰なのか

2010年代

2016年10月31日の午後3時半ごろ、函館市西旭岡町1丁目の住宅を、介護施設の職員が訪れた。施設で過ごしていたこの家の夫を、車で送り届けに来たのだった。正面の玄関には鍵が掛かっていたため、職員は庭を回って裏口へ向かった。裏口のドアは半開きになっていて、その先で、この家に住む岸田友子さん(当時68歳)が首から血を流してうつぶせに倒れていた。

岸田さんは病院へ運ばれたが、亡くなった。首には鋭い凶器による複数の傷があり、死因は出血性ショックだった。家の中に争った跡や物色された跡はなく、凶器も見つかっていない。

事件が起きたのは、昼前から午後にかけての住宅街だったとみられている。それでも犯人につながる手がかりは見つからず、2026年10月31日で事件から10年を迎える。

事件概要

項目内容
発覚2016年10月31日 午後3時半ごろ
場所北海道函館市西旭岡町1丁目の住宅
被害者岸田友子さん(当時68歳)
発見場所自宅1階の裏口付近
発見者夫を送り届けた介護施設の職員
死因首の複数の傷による出血性ショック
凶器鋭い刃物とみられるが、見つかっていない
現場の状況玄関は施錠、裏口は半開き、争った跡や物色の跡はなし
捜査函館中央警察署 捜査本部
現在未解決

夫を送り届けた職員が見つけた

岸田さんは夫と2人で暮らしていたが、事件の日、夫は介護施設に泊まっていて家にいなかった。当時の報道を整理した記録によれば、夫は10月28日から宿泊型の介護サービスを利用しており、岸田さんはその間、家で一人だった。

10月31日の午後3時半ごろ、夫を送ってきた職員が玄関に鍵が掛かっているのを確かめ、裏口に回って岸田さんを見つけた。職員がすぐに110番通報したが、岸田さんは搬送先の病院で亡くなった。

昼前に買い物から戻っていた

岸田さんはその日、市内のスーパーへ車で買い物に出かけていたと報じられている。近所では事件の前に岸田さんが目撃されており、警察は、昼前に帰宅してから午後3時ごろまでの間に殺害された可能性が高いとみた。

夜中に人目を避けて忍び込んだ事件ではない。人々が起きて活動している時間帯の、閑静な住宅街で起きた事件だった。

首の傷と、静かな現場

函館新聞の当時の報道によれば、岸田さんの首には鋭い凶器による複数の傷があったが、凶器の種類や傷の数は分かっていない。首以外にも新旧の複数の傷があったが、それが犯人ともみ合ったときにできた防御創なのかどうかは不明で、捜査関係者は「顕著な防御創は見つかっていない」と話していた。

家の中に争ったような目立った跡はなかった。何かが盗まれたかどうかも、事件の前の家の中の様子を詳しく知る人が少ないため、特定は難しいとされた。裏口のドアには血の跡が残っており、DNA型鑑定が行われたが、その結果は公表されていない。

捜査と謎・数々の説

警察の動向

函館中央署は当初、自殺の可能性も考えていたが、2日後の11月2日に「自殺はほぼない」として殺人事件と判断し、捜査本部を置いた。11月17日には約80人態勢で現場周辺の山の急斜面や道路脇を捜し、11月下旬には2度目の車両検問も行ったが、凶器は見つからなかった。

捜査に投入された人員は、事件から5年の2021年に延べ5万3470人、6年の2022年に延べ約5万8000人、そして2025年には延べ7万5000人に達した。毎年10月の事件の日が近づくと、函館中央署の捜査員が市内の商業施設や函館競馬場の前でチラシを配り、「うわさ話や又聞きなど、どんな情報でも結構です」と呼びかけている。

残された謎

最大の謎は、犯人がどこから入り、どこから出ていったのかという点である。玄関には鍵が掛かり、岸田さんは半開きの裏口の近くで倒れていた。犯人が裏口から入ったのか、裏口から逃げたのか、岸田さん自身が誰かのために裏口を開けたのかは、公開されている情報からは分からない。

動機も分かっていない。家の中は荒らされておらず、何かが盗まれたかどうかも特定できていない。凶器は見つからず、犯人が持ち去ったとみられている。

説1:岸田さんが招き入れた人物

家の中に争った跡がなく、顕著な防御創も見つかっていないことから、岸田さんが顔見知りの人物を自ら家に入れたのではないかという見方がある。ただし、突然襲われれば抵抗する間もなかった可能性もあり、警察は犯人と岸田さんの関係について何も公表していない。

説2:周辺に出没していた不審者

函館新聞は事件から1か月の時点で、複数の住民が事件の前から近所に不審者が出没していたと指摘し、岸田さんの家の近くに注意を呼びかける看板が立てられていたと報じている。その不審者と事件の関係は分かっていないが、警察が「付近をうろついていた不審者」の情報を求めているのは、こうした背景もあるとみられる。

説3:留守を狙った侵入者との鉢合わせ

昼間に家の人がいないと思って入り込んだ人物が、買い物から戻った岸田さんと鉢合わせになったという見方もある。しかし、家の中に物色の跡がない点は、この見方では説明しにくい。

未詳録の考察

この事件で私が一番引っかかったのは、裏口そのものよりも、事件が起きたとみられる時間帯だった。岸田さんは昼前に帰宅し、午後3時半には見つかっている。夜中ではなく、人々が起きて活動している時間の住宅街で事件は起きた。それなのに、犯人につながる決定的な目撃情報は今も出ていない。家の中には争いや物色の跡もなかった。

こうした事実を並べると、「犯人は自然に家に近づける人物だったのではないか」「岸田さん自身が扉を開けたのではないか」と考えたくなる。けれど、それを裏付ける資料はない。未解決事件では、こうしたもっともらしく思える推測が一番危うい。違和感は違和感として残しても、それを事実として書かないようにしたい。

未解決事件の記事を100本以上作ってきて感じるのは、長く語り継がれる事件と、ほとんど知られなくなってしまう事件があることだ。この事件は、残念ながら後者に近い。だからこそ、2016年10月31日の昼間に西旭岡町で何があったのかを、記録として残しておく意味がある。

事件がもたらした影響・結末

地域に置かれた防犯カメラ

事件から2年がたった2018年には、現場にはまだ警察の規制線が張られたままだった。同じ年の3月、地元の西旭岡町会は寄贈された防犯カメラ3台を、現場周辺の住宅2軒と集会所に設置している。函館新聞によれば、現場の周辺はもともと近所づきあいが少ない地域だったという。昼間の住宅街でも、人の目が届かない時間は生まれる。地域ぐるみの見守りの大切さを示す出来事である。

県警の一覧に載っていない事件

北海道警の本部サイトにある「殺人事件に関する情報をお寄せください」の一覧には、函館市のタクシー運転手強盗殺人事件などが並んでいるが、この事件は載っていない。情報提供を呼びかけるページは、函館中央署のサイトにある。本部の一覧から事件を探す人の目には、触れにくい場所である。

時効のない事件として

殺人罪の公訴時効は2010年に撤廃されており、2016年に起きたこの事件には時効がない。2026年10月現在、事件は解決しておらず、函館中央署の捜査本部は今も情報を求めている。

情報提供先

北海道警察 函館方面 函館中央警察署 捜査本部
電話:0138-54-0110

北海道警は、うわさ話や又聞き、当時付近で見かけた人や車など、ささいな情報でも寄せてほしいとしている。

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参考資料

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