三田市千丈寺湖男性死体遺棄事件|コンクリート詰めの頭蓋骨、15年たっても名前が分からない男性は誰なのか

コンクリートの塊がある湖畔と橋(三田市千丈寺湖男性死体遺棄事件のイメージ) 2010年代

2011年2月14日の午前10時45分ごろ、兵庫県三田市の千丈寺湖で釣りをしていた16歳の男子高校生が、水際に転がる奇妙なコンクリートの塊に気づきました。雨の少ない冬で、湖の水位は湖底が見えるほど下がっていました。その塊の中に詰められていたのは、人間の頭蓋骨だったのです。

近くからは首の骨や左足首の骨も見つかり、遺体は30〜40代とみられる男性のものと分かりました。兵庫県警は頭蓋骨から顔を復元し、3Dの復顔像まで作って情報を求めてきました。それでも、事件の発覚から15年がたった今も、この男性が誰なのかは分かっていません。犯人を捜す以前に、亡くなった人の名前すら取り戻せていない事件なのです。

事件の概要

項目内容
事件名三田市千丈寺湖男性死体遺棄事件(兵庫県警の呼び名は「三田市千丈寺湖における男性死体遺棄事件」)
発見2011年2月14日午前10時45分ごろ
場所兵庫県三田市小野、千丈寺湖(青野ダム)の湖畔。湖の東部に架かる黒郷橋のほぼ真下
見つかったものコンクリートに詰められた頭蓋骨、首の骨、左足首の骨
被害者身元不明の男性(30〜40代とみられる)
死後の経過発見の時点で1〜5年と推定
特徴1962〜73年生まれの可能性、身長145〜165センチ、小柄で小顔、AB型、歯並びが非常に悪い、口蓋裂の手術を受けた可能性
捜査死体遺棄は時効。兵庫県警捜査第一課と三田警察署の合同捜査班が殺人の疑いで捜査
現在男性の身元も、犯人も分かっていない

水位の下がった湖で見つかった塊

千丈寺湖は、三田市小野にある青野ダムによってできた湖です。湖の周りにはランニングコースが整えられ、近くには飯盛山公園もあります。釣りや散歩を楽しむ人が訪れる、穏やかな場所です。

2011年の冬は雨が少なく、ふだんは水の底にある場所まで姿を見せていました。高校生が見つけたコンクリートの塊があったのは、湖の東部に架かる黒郷橋のほぼ真下です。この位置関係から、警察は何者かが橋の上から塊を投げ入れた可能性があるとみています。もし湖の水位が下がっていなければ、この塊は今も水の底に眠っていたのかもしれません。

名前のない男性の手がかり

調べの結果、遺体は30〜40代とみられる男性で、見つかった時点で亡くなってから1〜5年がたっていると推定されました。つまり、男性が亡くなったのは2006年ごろから2010年ごろのあいだということになります。兵庫県警が公開している男性の特徴は、次のとおりです。

項目公開されている特徴
性別男性
生まれ1962年(昭和37年)〜1973年(昭和48年)生まれの可能性
身長145〜165センチ
体格小柄で小顔
血液型AB型
歯歯並びが非常に悪く、治療もあまりされていない
手術歴口蓋裂の手術を受けた可能性

なかでも警察が重く見てきたのが、歯の特徴です。県警は全国の歯科医師会などにも捜査員を送り、治療の記録から身元をたどろうとしてきました。さらに2023年には、生まれつき上あごの一部が閉じていない「口蓋裂」の手術を受けた可能性があるという特徴が、新たに書き加えられています。子どものころに手術を受けていたとすれば、家族や同級生、医療関係者の記憶に残っているかもしれないのです。

頭蓋骨から作られた二つの顔

男性の顔を知る人を見つけるため、兵庫県警は頭蓋骨から生前の顔を推定する「復顔」に取り組みました。最初の復顔像は、コンクリートに残っていた顔の形も手がかりにして作られ、2011年11月に全国に公開されました。

事件から12年となった2023年2月14日には、県警の科学捜査研究所と警察庁の科学警察研究所を通じて作られた、新しい3Dの復顔像が公開されます。県警のホームページには今、平面の復顔像2点と、3Dの復顔像4点が掲載されています。三田署の刑事課長は「復顔像は可能性として公開している」と話しています。骨格から推定した顔は、本人とまったく同じとは限りません。少し違うかもしれない、という気持ちで見てみることも大切なのでしょう。

兵庫県警の公式ページで復顔像を見る

寄せられた情報は233件

捜査は長く続いています。2022年2月の時点で、投入された捜査員は延べ約3万5500人、寄せられた情報は198件でした。新しい復顔像が公開された2023年2月には、捜査員は延べ3万8094人、情報は計205件にのぼります。その後の1年間には、前の年の約3倍にあたる19件の情報が寄せられましたが、身元の特定にはつながりませんでした。

事件の発覚から15年となった2026年2月14日の朝、警察官たちはJR三田駅の周りでビラを配りました。これまでに寄せられた情報は233件。それでも有力な手がかりは得られていません。三田署の刑事課長は「断片的、抽象的な情報でも結構なので、情報を寄せていただければ助かる」と呼びかけています。

捜査と謎・数々の説

警察の動向

死体遺棄の疑いは時効の3年を過ぎましたが、兵庫県警捜査第一課と三田警察署の合同捜査班は、殺人の疑いで捜査を続けています。男性が亡くなったとみられる2006年ごろ以降の殺人であれば、2010年に時効が廃止された時点でまだ時効を迎えていなかったか、改正後の事件にあたるため、いずれにしても時効はありません。県警はホームページで、男性を知っている人、似た人を知っている人、男性の家族や友人、事件のことを聞いた人からの情報を求めています。

残された謎

最大の謎は、言うまでもなく男性が誰なのかということです。どこで、どのように亡くなったのかも公表されていません。遺体をコンクリートに詰めるには、材料と道具、場所、そして時間が必要です。それだけの手間をかけてまで、男性の存在を隠そうとした人物がいたことになります。見つかったのが頭蓋骨と一部の骨だけだったことも、遺体のほかの部分がどうなったのかという疑問を残しています。

説1:男性をよく知る人物による犯行

コンクリート詰めという方法には、遺体を見つからなくするだけでなく、身元を分からなくする意図があったのではないかという見方があります。身元が分かれば自分にたどり着かれてしまう。そう考える人物、つまり男性と近い関係にあった人物が関わっていたのではないか、というものです。ただし、それを裏付ける事実は公表されていません。

説2:探す人のいない男性だった

15年たっても身元が分からないのは、男性がいなくなっても、行方不明の届けを出す家族や周りの人がいなかったからではないかという見方もあります。家族との縁が薄かった、住まいや仕事を転々としていたといった事情があれば、姿が見えなくなっても気づかれにくいでしょう。もっとも、これも推測で、男性がどんな暮らしをしていたのかはまったく分かっていないのです。

未詳録の考察

この事件でいちばん重く感じるのは、15年間、亡くなった男性が名前で呼ばれていないことです。殺人事件の捜査は、ふつう被害者の暮らしや人間関係をたどるところから始まります。けれど、被害者が誰なのか分からなければ、その最初の一歩さえ踏み出せません。犯人を捜すためにも、まず男性に名前を返すことが必要なのです。

そして、男性にもきっと、子どものころがあり、誰かと過ごした日々があったはずです。口蓋裂の手術を受けていたのなら、それを支えた家族がいたのかもしれません。歯並びのことを覚えている同級生がいるかもしれません。「そういえば、あのころから連絡が取れなくなった人がいる」。そんな小さな心当たりこそが、男性の名前を取り戻す鍵になるのではないでしょうか。

湖の水位が下がらなければ、この事件は誰にも知られずに終わっていたかもしれません。水の底から現れた男性は、今も自分の名前を呼んでくれる人を待っているのだと考えます。

事件がもたらした影響・結末

死体遺棄の時効と、殺人の捜査

この事件では、死体遺棄の疑いは3年で時効を迎えてしまいました。遺体を隠した行為そのものは、もう罪に問えません。けれど、2010年の時効廃止によって、殺人の疑いについては、どれだけ時間がたっても捜査を続けることができます。時効の仕組みが変わったことで、この事件はつなぎとめられているのです。

進む技術と、身元不明の人たち

2011年の復顔像から、2023年の3D復顔像へ。技術が進むたびに、男性の顔はより確かな形で示されるようになりました。全国には、名前の分からないまま眠っている人が少なくありません。技術を使って顔を示し、それを多くの人が見ることで記憶とつながる。この事件は、身元不明の人に名前を取り戻すための取り組みが、これからも欠かせないことを示しているのではないでしょうか。

情報提供先

復顔像に似た人を知っている、2000年代の後半から連絡が取れなくなった男性に心当たりがある、公開された特徴に思い当たる人がいる。どんなに小さなことでも、次の窓口へ連絡してください。県警は情報を寄せた人の秘密を守るとしています。

窓口電話
兵庫県警察本部刑事部捜査第一課・三田警察署 合同捜査班079-563-0110(三田警察署代表、24時間受付)
そのほか最寄りの警察署・交番、または110番

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参考資料

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