浜松市子安町女性介護士殺人事件|夜のポスティング中に消えた50歳、午後10時の悲鳴と玄関先の遺体

2010年代

2014年11月28日の午後9時すぎ、浜松市東区(現在の中央区)子安町に住む介護士の大橋貞子さん(当時50歳)は、自転車で家を出た。この日は、情報誌を家々の郵便受けに配るアルバイトの日だった。夜道を心配した夫が「一緒に行くか」と声をかけると、大橋さんは「いいよ、仕事もあるんだから」と答えて出かけたと報じられている。

大橋さんは帰ってこなかった。夫は翌29日の午前0時半ごろ、警察に行方不明者届を出した。そして29日の朝、捜索していた警察官が、自宅近くの別の民家の玄関先で倒れている大橋さんを見つけた。首には刃物で切られた傷があり、すでに亡くなっていた。

事件の夜、付近では女性の悲鳴を聞いた住民がいた。それでも、12年近くたった今も犯人は分かっていない。

事件概要

項目内容
外出2014年11月28日午後9時すぎ、自転車で
発見2014年11月29日朝
場所浜松市東区子安町(現・中央区子安町)の民家の玄関先
被害者介護士の大橋貞子さん(当時50歳)
当夜の状況情報誌を配るアルバイトの途中
死因首を刃物で切られたことによる失血死
凶器見つかっていない
捜査浜松東警察署 捜査本部
現在未解決

夜の住宅街で情報誌を配っていた

大橋さんは市内の老人福祉施設などで介護士として働く一方、夜は情報誌を家々の郵便受けに配るアルバイトをしていた。11月28日の午後9時すぎ、大橋さんは自転車で配達に出かけた。浜松東署はその後の情報提供の呼びかけでも、大橋さんは情報誌の配達の仕事中に襲われたとみられると説明している。

当時のNHKの報道を保存した記録によれば、帰りが遅いのを心配した家族が近所を探すと、自宅から約200メートル離れた道路脇で大橋さんの自転車が見つかった。しかし本人の姿はなく、携帯電話にも出なかったという。

午後10時ごろの悲鳴

当時のTBSや地元テレビ局の報道によれば、事件の夜の午後10時ごろ、現場付近の複数の住民が女性の悲鳴を聞いていた。大橋さんが家を出てから1時間ほど後のことである。その悲鳴が大橋さんのものだったのかどうかは確認されていないが、事件が起きた時刻を考えるうえで重要な証言である。

翌朝、民家の玄関先で

11月29日の朝、捜索していた浜松東署の署員が、子安町の民家の敷地内で、首から血を流して倒れている大橋さんを見つけた。発見の時刻は、事件当日の報道では午前7時15分ごろ、2023年の中日新聞では午前6時ごろとされている。

大橋さんの首には刃物によるとみられる傷があり、死因は失血死だった。当日の報道によれば、着衣に乱れはなく、現場の付近から凶器とみられる物は見つからなかった。静岡県警は殺人事件と断定し、浜松東署に約70人態勢の捜査本部を置いた。

県警の一覧にある日付の違い

静岡県警は、県内に14件ある未解決重要事件の一つとして、この事件を「女性(50)が民家の庭先において刺殺された」殺人事件として掲載している。ただし、2026年8月25日に更新された一覧では、発生・覚知日が「平成26年11月26日」となっている。

一方、事件当時の報道も、その後の各社の報道も、大橋さんが11月28日の夜に家を出て、29日の朝に見つかったと伝えている。県警の一覧の日付がなぜ2日ずれているのかは分からない。本記事では、具体的な経過については報道の日付に従っている。

捜査と謎・数々の説

警察の動向

浜松東署の捜査本部は、毎年11月の事件の日が近づくと、現場近くのJR天竜川駅で通勤客らにチラシ入りのティッシュを配り、情報提供を呼びかけている。2025年11月の時点で、投入された捜査員は延べ約4万1000人、寄せられた情報は計67件で、そのうち9件はこの1年間に寄せられたものだった。しかし、犯人の特定には至っていない。静岡県警は、現場周辺の聞き込みやDNA型鑑定などの捜査を続けていると説明している。

残された謎

最大の謎は、大橋さんが見つかった民家の敷地で何が起きたのかである。当時の報道を整理した記録によれば、その家の住人と大橋さんに個人的な付き合いはなく、大橋さんが情報誌を郵便受けに入れようと敷地に入ったところを襲われた可能性が調べられていたという。しかし、大橋さんがその場所で襲われたのか、別の場所で襲われて逃げ込んだのかは公表されていない。

犯人が一人だったのか、大橋さんと面識があったのか、待ち伏せていたのか、偶然出会ったのかも分かっていない。着衣に乱れがなかったことから、犯人の目的も見えていない。

説1:配達先で偶然出会った人物

夜の住宅街を回っていた大橋さんが、配達先の周辺にいた人物と偶然出会い、襲われたという見方である。配達のために見知らぬ家の敷地に入る仕事であったことから考えられる可能性だが、犯人の目的は説明できない。

説2:大橋さんの行動を知っていた人物

大橋さんが毎回同じような時間に同じ地域を回っていたとすれば、その行動を知っていた人物が待ち伏せしていたのではないかという見方もある。しかし、大橋さんの周辺でトラブルがあったという情報は公表されていない。

同じ年、同じ浜松で起きたもう一つの事件

静岡県警の未解決重要事件の一覧で、この事件のすぐ前に並んでいるのが、2014年4月21日に浜松市西山町(現・中央区)で79歳の女性が自宅の台所で首を切られて殺害された事件である。同じ年、同じ浜松市の中で、7か月の間に女性が首を刃物で切られて殺害され、どちらも未解決のまま残っている。

ただし、2つの事件のつながりを示す情報は、警察からも報道からも出ていない。被害者の年齢も、事件の起きた場所や状況も異なる。

未詳録の考察

この事件で私が特に引っかかるのは、大橋さんが「普通の夜の仕事」をしていただけだったということである。危ない場所へ出かけたわけでも、誰かと会うために出かけたわけでもない。近所の住宅街で情報誌を配っていて、自宅から遠くない民家の玄関先で殺害された。

ここから、配達先で偶然犯人と出会ったのではないか、配達のルートを知っていた人物ではないかと、話を作ることはいくらでもできる。けれど、それを裏付ける資料はない。むしろこの事件の不気味さは、犯人の目的がほとんど見えてこないことにある。

ただ、午後10時ごろの悲鳴を聞いた人がいたように、あの夜の子安町には、何かを見たり聞いたりした人がいたはずである。その記憶が消えてしまう前に、警察に届いてほしいと思う。

事件がもたらした影響・結末

夜に一人で家々を回る仕事

ポスティングや新聞配達、訪問の仕事は、夜や早朝に一人で住宅街を回ることが多い。この事件は、そうした仕事に危険が潜むことを示している。事件の前夜、夫が「一緒に行くか」と声をかけていたという報道は、その危うさを家族も感じていたことを物語っている。

時間がたっても事件は動く

2025年11月の情報提供の呼びかけで、浜松東署の刑事官は、発生から26年後に容疑者が逮捕された名古屋市の主婦殺害事件に触れ、殺人事件に時効はないと強調した。殺人罪の公訴時効は2010年に撤廃されており、2014年に起きたこの事件には時効がない。

事件は現在も未解決

2026年10月現在、事件は解決していない。2026年11月29日で、事件から12年を迎える。

情報提供先

浜松東警察署 捜査本部(フリーダイヤル)
電話:0120-003-998

静岡県警捜査第一課(054-271-0110)や最寄りの警察署でも受け付けている。

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参考資料

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