五條堀美咲さん行方不明事案|午前1時のLINE、6時前に途絶えた位置情報――10年後に明かされた「床下の通帳」

夕暮れに灯りのともる住宅街のアパート(五條堀美咲さん行方不明事案のイメージ) 2010年代

2016年9月25日、日曜日の夜。大分市横尾のアパートで一人暮らしをしていた24歳の会社員が、部屋を訪ねてきた友人を見送りました。午後11時半ごろのこと。五條堀美咲(ごじょうぼり・みさき)さんの姿が人の目に確かめられたのは、これが最後になります。

その後も美咲さんは、日付が変わった26日の午前1時過ぎまで、友人とLINEでやり取りを続けていました。携帯電話の位置情報が自宅の周辺で途絶えたのは、午前6時前。そしてその朝、まじめに働いてきた彼女が、初めて職場に姿を見せなかったのです。

部屋には鍵がかかり、荒らされた様子もない。干したままの洗濯物が、いつもどおりの暮らしを物語っていました。警察は延べ5万9000人を投入して捜し続けてきたものの、手がかりはつかめないまま。行方不明から10年を迎える2026年9月、彼女の名義の通帳がアパートの近くで見つかっていたことが、初めて報じられました。

事件の概要

項目内容
通称五條堀美咲さん行方不明事案
行方不明者五條堀美咲さん(当時24歳、会社員)
出身福岡県久留米市(2015年から大分市に在住)
最後に確認された日時2016年9月25日(日)午後11時半ごろ、自宅アパートで友人と別れる
場所大分県大分市横尾のアパート(一人暮らし)
最後の連絡9月26日午前1時過ぎまで友人とLINEでやり取り
携帯電話の位置情報9月26日午前6時前、自宅周辺で途絶える
見つかっていない物携帯電話(iPhone 6s・ゴールド)、グレーのトートバッグ
その後の発見物本人名義の通帳(アパート近くの住宅の換気口付近。2026年9月に報道)
捜査員延べ約5万9000人(2026年9月時点)
情報提供346件(同)
現状所在不明。県警は事件に巻き込まれた可能性も視野に捜査を続けている
情報提供先大分県警察 大分東警察署(097-527-2131)

ネイルサロンとファミレス、変わらない休日

美咲さんは福岡県久留米市の出身です。2015年に大分市へ移り、横尾のアパートで一人暮らしをしながら会社勤めをしていました。行方が分からなくなったとき、大分での暮らしはまだ1年あまり。新しい土地で、ようやく生活が落ち着いてきたころだったのかもしれません。

2016年9月25日は仕事が休みでした。テレビ大分(TOS)の報道によると、美咲さんはこの日、自宅近くのネイルサロンに出かけ、友人とファミリーレストランで食事を楽しみました。周りの目には、普段と変わった様子は映っていなかったといいます。

勤め先は美咲さんについて「無遅刻無欠勤で勤務態度はまじめだった」と話しています。爪を整え、友人と食事をして、翌日からまた仕事へ。どこにでもある日曜日の過ごし方だったはずです。

午後11時半、友人を見送ったあと

夜になると、美咲さんのアパートには友人の女性が訪ねてきていました。その友人が帰ったのが、午後11時半ごろ。県警が公表している「最後に確認された」時刻は、この場面のことです。

ただ、美咲さんとのつながりは、ここで切れたわけではなかった。友人が帰ったあとも、彼女は翌26日の午前1時過ぎまで、友人とLINEでメッセージを交わしていました。やり取りの中身は明らかにされていないものの、少なくとも日付が変わるころまでは、いつもの夜が続いていたように見えるのです。

午前6時前、自宅周辺で途絶えた位置情報

もう一つの記録が、携帯電話の位置情報です。美咲さんが持っていたゴールドのiPhone 6sの位置情報は、26日の午前6時前に、自宅の周辺で途絶えたまま。

最後のLINEからおよそ5時間。この間に何があったのかは、誰にも分からないのです。眠っていたのか、どこかへ出かけたのか。位置情報が「自宅周辺」を示していたとしても、それが部屋の中だったのか、アパートの外の路上だったのかまでは公表されていないのです。

途絶えた理由も、電池が切れたのか、電源が切られたのか、あるいは壊れたのかは報じられていません。それでも、午前1時と午前6時という二つの時刻のあいだに、美咲さんの身に何かが起きた可能性は高いといえるでしょう。

無断欠勤と、鍵のかかった部屋

26日、美咲さんは職場に現れませんでした。無遅刻無欠勤だった社員からの連絡もない欠勤です。不審に思った会社が福岡の両親に電話を入れ、両親は大分市横尾のアパートへ駆けつけます。

部屋は施錠されていました。鍵はカードキーか暗証番号で開けるタイプで、室内には複数のカードキーが残されていたといいます。父親は部屋の様子を「荒らされた状態ではなかった。普段と変わらない状況。洗濯物が干されていた」と振り返っています。

一方で、携帯電話と、グレーのトートバッグは見つかっていません。バッグは横20センチ、高さ23センチ、幅17センチほどの大きさで、外側に飾りが付いたものです。両親はその日の夜のうちに捜索願を出し、10月6日には公開捜査に切り替えられました。

カードキーを部屋に置いたまま、携帯とバッグだけを持って出る。暗証番号で開け閉めできる部屋なら、ありえない話ではありません。ただ、扉が閉まると自動で鍵がかかる仕組みだったのか、誰がいつ施錠したのかといった点は報じられておらず、鍵の状態だけで自分の意思で出かけたと決めることはできないはずです。

延べ5万9000人、10年続く捜索

大分県警は、周辺での聞き込みや防犯カメラの解析、自宅周辺の池の捜索などを重ねてきました。SNSなどで交流があった人を含め、200人以上から話を聞いたといいます。それでも、美咲さんの足取りを示す有力な手がかりは見つかっていません。

報道された数字を並べると、年月の重みがよく分かります。

時点動員した捜査員情報提供の累計その年に寄せられた情報
2024年8月末延べ約4万7000人321件4件
2025年8月末延べ約5万3000人332件3件
2026年8月末延べ約5万9000人346件3件

捜査員は毎年数千人ずつ投入されているのに、新しい情報は年に3件か4件。2024年9月には、風化を防ごうと県警が美咲さんの顔写真3枚を新たに公開し、チラシに載せて配りました。2026年9月の定例会見でも、生活安全部長が「決して風化させない」との姿勢を示し、必ず発見すると語りました。

10年目に明かされた通帳

行方不明から10年を目前にした2026年9月、新しい事実が報じられます。美咲さん名義の預金通帳が、アパートの近くで見つかっていたというのです。

テレビ大分は9月18日、捜査関係者の話として、通帳が自宅近くの集合住宅の床下の排気口付近で見つかっていたと伝えました。共同通信も24日、アパート近くの住宅の換気口付近で見つかっていたと配信しています。どちらの報道でも、口座から現金が引き出された形跡はないとされました。

食い違っているのは、見つかった時期です。共同通信は「不明となってまもなく、捜査員が見つけた」とし、テレビ大分は「行方不明になって数年後」としています。どちらが正しいのか、公表されている情報からは判断できません。はっきりしているのは、通帳の存在が10年近く公にされていなかったということでしょう。

警察は、第三者が通帳を隠したり捨てたりした可能性も含めて慎重に調べていると報じられ、共同通信の見出しも「事件の可能性視野に」でした。もっとも、誰がそこに置いたのかは分かっていないのが実情です。見つかった建物に住む人や関係する人が事件に関わったという情報も、一切ないのです。

捜査と謎・数々の説

警察の動向

大分県警は当初から「事件や事故に巻き込まれた可能性がある」として公開捜査を続けてきました。2026年の通帳をめぐる報道では、事件に巻き込まれた可能性も視野に入れていると伝えられています。行方不明から10年を迎えた9月25日には、大分東署の生活安全課長が「少しでも早く、発見したという報告をしたい」と語りました。ただ、犯罪が起きたと認定したわけではなく、所在の分からない行方不明者として捜索が続いている状態です。

残された謎

最大の謎は、やはり午前1時過ぎから午前6時前までの空白です。LINEが途切れた理由も、位置情報が消えた理由も分からない。この5時間に、美咲さんは部屋を出たのか、出たとすれば誰かと一緒だったのか。答えにつながる記録は、今のところ公表されていません。

そこへ加わったのが、通帳の謎です。普段持ち歩くことの少ない通帳が、なぜ自宅ではなく近くの建物の床下にあったのか。美咲さん自身が持って出たのか、別の誰かが部屋から持ち出したのか。見つかった時期の説明が報道によって違うことも、謎を深くする一因でしょう。

説1:第三者が関わった事件

家族が最も強く考えているのが、この可能性です。父親は2025年の取材で、9年間、携帯電話を使った形跡も病院にかかった形跡もないことから、自分から姿を消すとは考えにくいと話し、「第三者がいるだろう」と語っています。人目につきにくい床下の排気口付近から通帳が見つかったことも、誰かが隠したのではないかという見方を強める材料です。

一方で、誰かが部屋に入った痕跡や、美咲さんが連れ去られる場面を見た人の情報は公表されていません。部屋が荒らされていなかった点も、無理やり連れ出されたとは考えにくい事情として残ります。

説2:深夜から早朝の外出中に起きた事故

午前1時から6時までのどこかで、美咲さんが自分で外に出て、事故に巻き込まれたという見方です。カードキーを置いて出られる部屋だったなら、近くまで出かけるつもりで部屋を出たことも考えられます。県警が池の捜索をしてきたのも、この可能性を消していくためだったはずです。

ただ、事故であれば、本人や携帯電話、バッグが近くで見つかってもおかしくありません。10年たっても何ひとつ出てこないこと、そして通帳が建物の床下という場所で見つかったことは、単純な事故だけでは説明しにくいところです。

説3:自らの意思による失踪

成人の行方不明では、本人が自分の意思で姿を消す場合も少なくありません。ただ、美咲さんについては、翌日に普通に仕事へ行くはずだったこと、勤務態度がまじめだったこと、10年間、携帯電話の利用も病院の受診もないことなど、自ら姿を消したと考えるには無理のある事情がそろっているのです。口座から現金が引き出されていない点も、新しい生活を始めるための失踪とは結びつきにくいでしょう。

ネット上の考察について

長く未解決の事案だけに、ネット上には交友関係などをめぐるさまざまな憶測が出回っています。けれど、その多くは根拠の示されていない話です。特定の誰かを疑わせるような書き込みは、家族や周囲の人を深く傷つけかねません。この記事で取り上げたのは、報道や警察の発表で確かめられる事実だけです。

未詳録の考察

この事案の記録を並べてみると、美咲さんの夜は「午後11時半」「午前1時過ぎ」「午前6時前」という三つの時刻で区切られているといえます。対面、メッセージ、位置情報。人との関わりが一つずつ薄れていき、最後は機械の記録だけが残ったわけです。

通帳の報道は、そこに新しい線を一本引きました。床下の排気口付近という場所は、たまたま落としたものが転がり込むような場所とは思えません。誰かが意図して置いたのだとすれば、通帳はどこかの時点で美咲さんの手を離れ、その人物のもとに渡っていたことになるのではないでしょうか。もちろん、通帳がいつからそこにあったのか分からない以上、これは一つの可能性にすぎません。それでも、10年たって公にされたこの情報が、誰かの記憶を呼び起こすきっかけになってほしいと願わずにはいられないのです。

父親は毎年、福岡から大分へ足を運び、「今年が最後になればいいな」という思いでチラシを配っています。最後にしたいのは、呼びかけそのものではなく、娘を捜し続ける日々のほう。その願いがかなう日を、待ちたいと思います。

事件がもたらした影響・結末

「同じ日のうちに」動いた家族と職場

この事案では、無断欠勤に気づいた会社がすぐに家族へ連絡し、両親はその日の夜に捜索願を出しています。異変から届け出までが、ほぼ1日のうちに進んだケースです。それでも美咲さんは見つからなかった。行方不明は、早く気づけば必ず解決するものではないという現実も、この事案は突きつけてくるのです。一人暮らしの若い人の暮らしを、職場や家族がどう見守るのか。その問いは、今も多くの家庭に重なるはずです。

情報の減少と、風化との闘い

情報提供は年に数件まで減り、県警は2024年に顔写真を新たに公開するなど、呼びかけ方を工夫してきました。10年の節目となった2026年9月25日には、両親と捜査員らがアパート周辺やJR大分駅などでチラシを配り、改めて情報を求めています。報道によれば、美咲さんは現在34歳。事件は解決しておらず、その行方は今も闇の中です。

情報提供先

大分県警察は、五條堀美咲さんについて今も情報提供を呼びかけています。2016年9月25日の深夜から26日の朝にかけて、大分市横尾周辺で見かけたことや、気になったことがあれば、小さなことでも連絡してほしいとしています。

項目内容
氏名五條堀美咲さん
年齢当時24歳(2026年現在34歳)
身長約149cm
体格やせ型
髪型黒のセミロング(当時)
持っていた可能性がある物iPhone 6s(ゴールド)、グレーのトートバッグ(横20×高さ23×幅17センチ、外側に飾り付き)

大分県警察 大分東警察署
電話:097-527-2131
大分県警察「行方不明者に関する情報提供」(手配番号:大分東警察署第69号)

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参考資料

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