客を乗せ、行き先を聞き、目的地まで車を走らせる。タクシー運転手にとっては毎日の仕事です。しかし未詳録には、その日常の途中で運転手が命を奪われ、今も犯人が特定されていない事件がいくつも記録されています。
このページでは、2006年から2010年にかけて起きた4つのタクシー運転手強盗殺人事件をまとめました。4つの事件に同じ犯人や直接のつながりがあると確認された事実はなく、それぞれ別の未解決事件です。詳しい経緯は個別の記事をご覧ください。
4つの事件
| 発生 | 場所 | 被害者 | 残された主な手がかり |
|---|---|---|---|
| 2006年12月 | 北海道函館市・七飯町 | 八木橋朋弘さん(当時42歳) | GPSの走行記録、峠下の血痕と携帯電話 |
| 2009年7月 | 鳥取県鳥取市 | 下田和雄さん(当時60歳) | 車内の足跡、防犯カメラに映ったタクシー、駅にいた目撃者 |
| 2009年11月 | 新潟県新潟市 | 阿部次男さん(当時63歳) | 最後の乗客とみられる男の映像 |
| 2010年5月 | 神奈川県平塚市 | 荒井庄次郎さん(当時62歳) | 駅からの経路、燃やされた運転席 |
客を乗せてから、襲われるまで
4つの事件を時間の流れで並べると、違いがはっきり見えてきます。
| 事件 | 客を乗せた場所 | 襲われるまで | 事件後のタクシー |
|---|---|---|---|
| 函館 | 北斗市七重浜(午前3時50分ごろ) | 午前4時5分ごろに空車となり、4時20分ごろ峠下で停車 | 何者かが約15キロ運転し、函館港に放置 |
| 鳥取 | JR鳥取駅北口(午後9時34〜35分ごろ) | 約5〜6分後に射殺 | 犯人が約2キロ運転し、東今在家に放置 |
| 新潟 | JR新潟駅南口(午後10時40分ごろ) | 約20分後に殺害されたとみられる | 現場に停車したまま |
| 平塚 | JR平塚駅北口(午前2時20分ごろ) | 約20分後に横内で停車 | 現場に停車したまま、運転席に火 |
函館と鳥取では、運転手が襲われたあと、犯人とみられる人物がタクシーを運転して移動しています。新潟と平塚では、タクシーは現場に残されたままでした。
2006年|函館市タクシー運転手強盗殺人事件
北海道函館市・七飯町
2006年12月21日の朝、函館港の荷揚場に乗り捨てられていたタクシーのトランクから、運転手の八木橋朋弘さんが見つかりました。体には刃物で刺された傷があり、売上金がなくなっていました。
タクシー会社のGPSの記録によると、八木橋さんのタクシーは午前3時50分ごろに北斗市七重浜で客を乗せ、4時5分ごろには七飯町仁山で空車になっていました。その後、4時20分ごろに七飯町峠下で停車し、その付近の路上からは八木橋さんの血痕や携帯電話が見つかっています。タクシーは5分後に再び走り出し、約15キロ離れた函館港まで向かいました。そのとき運転席にいたのが誰なのかは、20年近くたった今も分かっていません。北海道警は、峠下から走り去るタクシーに追い抜かれたとみられる大型トラックの運転手を、今も探しています。
2009年|鳥取市タクシー強盗殺人事件
鳥取県鳥取市
2009年7月17日の夜、JR鳥取駅北口のタクシー乗り場から客を乗せて出発した下田和雄さんは、わずか5〜6分後、鳥取市立川町の住宅街で拳銃で撃たれて亡くなりました。犯人はタクシーを奪って約2キロ先の東今在家まで走り、そこで車を乗り捨てています。駅を出てからタクシーが見つかるまで、わずか15分ほどの出来事でした。
車内には特徴的な靴底の足跡が残り、産業道路を走るタクシーの姿が防犯カメラに記録されていました。鳥取県警は、犯人が乗車する直前に駅にいた2人の男性を、犯人を見ていた可能性のある人物として探しています。この事件は現在、上限300万円の捜査特別報奨金の対象です。
2009年|新潟市タクシー運転手強盗殺人事件
新潟県新潟市
同じ2009年の11月1日、雨の夜。JR新潟駅南口で一人の男が阿部次男さんのタクシーに乗りました。タクシーは寄り道をせずに新潟市東区空港西へ向かい、阿部さんはその場所で首を刺されて亡くなり、売上金が奪われました。ハザードランプは点滅したまま、料金メーターは「支払い」の表示になっていたと報じられています。
男の姿は駅周辺の防犯カメラに残されており、新潟県警は身長約165センチ、やせ型といった特徴を公開しています。この事件も、上限300万円の捜査特別報奨金の対象です。
2010年|平塚タクシー運転手強盗殺人事件
神奈川県平塚市
2010年5月20日の未明、平塚市横内の東海道新幹線の高架下に止められたタクシーのトランクから、運転手の荒井庄次郎さんが見つかりました。首には刃物で切られた傷があり、料金メーターや運転席のまわりが燃やされ、売上金がなくなっていました。報道によれば、荒井さんの死因は首の傷ではなく、運転席の火による一酸化炭素中毒でした。
タクシーは午前2時20分ごろにJR平塚駅北口を出発し、2時40分過ぎに横内で停車していました。車内を撮影するカメラはなく、神奈川県警は最後の乗客の人数や特徴を公表していません。
夜の車内という密室
4つの事件は、使われた凶器も、残された手がかりも異なります。拳銃が使われた鳥取、乗客の映像が残った新潟、タクシーが長い距離を走った函館、車内に火が付けられた平塚。
共通しているのは、運転手が深夜から未明にかけて乗務中に襲われ、売上金が奪われたことです。また、鳥取、新潟、平塚の3件では、駅のタクシー乗り場で客を乗せてから20分ほどのうちに事件が起きています。客を乗せて走り出した車内は、外からは見えにくい密室になります。
残された記録にも差があります。新潟では乗客の姿が駅の防犯カメラに残り、函館ではGPSの走行記録から車の動きを分単位で追うことができます。一方、平塚のタクシーには車内を映すカメラがなく、最後の乗客の顔を記録したものは存在しません。それでも、記録が残っている事件も含め、4件すべてで犯人の名前にはたどり着いていません。
時期や構図が似ていることから、事件どうしのつながりを考えたくなるかもしれません。しかし、4件の関連を示す情報はどの警察からも公表されておらず、未詳録ではそれぞれを別の事件として記録しています。


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